YAMAHA URX シリーズ の PC アプリケーションがないので作りました (UR-C / URX-C シリーズ用 dspMixFx のようなもの?)

YAMAHA URX シリーズ (URX22, URX44, URX44V) は DSP エフェクト、ミキサー内蔵のオーディオインターフェースです。Steinberg のソフトウェア (Cubase, Nuendo, MixKey) や Stream DeckCC1 などのコントローラーと連携して一部の機能を操作することが可能ですが、基本的には本体のタッチスクリーンで操作することが前提のデバイスになります。
しかし、内部のルーティングが複雑でわかりにくいという意見や PC のアプリケーションから操作できるようになれば便利になりそうだという意見が散見され、自分自身で購入した後にも思うところがありましたので、非公式のアプリケーションとして URX Router を作りました。

以下に、URX シリーズ本体と公式で用意されているエコシステムのみでの運用が難しいと感じる点をまとめておきます。

運用の課題となる制約 (2026/07/05 時点)

URX に dspMixFx は無い

おそらく UR-C / URX-C シリーズから URX に乗り換えると、まず戸惑うのがここだと思います。UR-C / URX-C シリーズを PC で操作するための dspMixFx は、URX22 / URX44 / URX44V を対象にしていません。従来機と同様に dspMixFx から操作しようと考えていると想定通りに使えないことになります。
本体のタッチスクリーンで操作することになりますが、ミキサー画面に一度に並べられるストリップは 4 本までです。モノラルの CH1–4 と、ステレオの CH5/6・7/8・9/10・11/12 (CH5–12) を切り替えて表示するかたちで、全チャンネルを 1 画面に並べて見渡すことはできません。

公式 Stream Deck プラグイン (Yamaha MGX/URX Plugin)

MGX / URX シリーズに対応する Elgato Stream Deck プラグインが公式に提供されています。アクションは、チャンネル/バスのレベル増減・ON/OFF (ミュート)・CUE・PAN/BAL 増減、HPF・GATE・COMP・EQ・INS FX・ダッカーといった処理ブロックの ON/OFF、STREAMING / MONITOR のソース選択などで、ワンタッチのトグル・ステップ操作が中心です。EQ やダイナミクスの中身のパラメーター編集、ルーティングの編集、フェーダーの連続操作はできません (レベルは段階増減のみ)。また、プラグインバージョン 1.1.0.0 時点では全アクションがキー向けで、Stream Deck+ のダイヤルコントロール向けのアクションは用意されていません。

Cubase / Nuendo / MixKey の DAW Integration

Cubase / Nuendo には URX との連携画面 (Software Integration) があり、DAW 内からの操作に対応します。ただし利用できるのは各ソフトの起動中のみで、DAW を使わない配信・会議などの用途で使用することは多少の困難が伴います。

MixKey も連携可能なアプリケーションの一つで、それ自体は配信向けの PC 側ソフトウェアミキサーです。追加したチャンネルからは URX 内蔵 DSP の操作にも対応します。チャンネル単位のパラメーター (ローカット・Direct Monitoring 等) に加え、EQ・INS FX といった DSP エフェクトのエディタも開けます。一方で操作は追加したチャンネルに紐づく単位が基本で、URX のミキサー全体 (全チャンネル・バス・ルーティング) を俯瞰して編集する機能はありません。

整理すると、公式の各手段と最終的に自分で作った URX Router の対応は次のようになります。

手段提供元できること制約
dspMixFx公式URX シリーズは対象外 (対応は UR-C / URX-C)
Stream Deck プラグイン公式チャンネル/バスのレベル増減・ミュート・CUE、処理ブロックの ON/OFF 等のワンタッチ操作パラメーターの中身・ルーティングの編集は不可能で、ダイヤル向けアクション無し
Cubase / Nuendo の DAW Integration公式DAW 内の連携画面からの操作各ソフトの起動中のみ
MixKey公式PC 側ソフトミキサー + 追加チャンネル単位の URX 内蔵 DSP 操作 (EQ・INS FX 等)ミキサー全体の俯瞰・ルーティング編集は不可能
URX Router非公式フルミキサーの読込 / 書込 / ライブ同期 + ルーティングの可視化・プランナー非公式・無保証。実機検証は URX44V のみ。一部パラメータは本体タッチスクリーン専用 (書込不可)

CC1 の機能については所有していないため分からない部分が多いですが、Stream Deck + MixKey と同様と推測します。
「DAW の有無に関わらず、PC から URX のルーティング設定を丸ごと読み書きし、全体を見渡す」— この点を満たす公式手段がありません。これが最初の動機でした。

本体でも信号フローが見えない

もう一つ、操作経路とは別の動機があります。URX は信号フローそのものが非常に見えにくいです。

URX の信号フローの全体像は公式ブロックダイアグラム (PDF) にしか描かれておらず、本体のタッチスクリーンは 1 画面に同時表示される機能が限定されています。どの経路が生きているかを一覧する手段が実機にはありません。

さらに、出力される音を決める設定の一部は画面から確認が非常に困難です。代表例がチャンネルのダイレクト出力です。チャンネル → USB / microSD のダイレクト出力はチャンネルの Rec Point の設定によって決まります。これはフェーダー・ダッカーより前段なので、ダッカーを ON にしてもダイレクト出力にはダッキングが乗りません。フェーダーやダッカーを通した信号を送るには STEREO / MIX バスを経由する必要がありますが、本体の画面からこの違いに気がつく事はほぼ不可能と考えられます。

実際に URX44V のレビュー動画のコメント欄には、「ダッキングがモニター出力には効くのに、USB で PC (OBS 配信) へ送る信号には乗らない。ルーティングの問題なのか、そもそも非対応なのか」という質問 (イタリア語・要旨) が投稿されています。信号フローが見えれば一目でわかるはずのことに、辿り着くことが非常に困難です。このような箇所を可視化と警告で助けたい、というのが二つ目の動機です。

作ったもの: URX Router

以上のような動機で作ったのが URX Router です。主な機能は次の通りです。

  • ルーティングプランナー: 公式ブロックダイアグラムに基づき、入出力・ミキサーバス・出力パッチをノードグラフで可視化。接続可能な経路のみ結線でき、PRE (プリフェーダー) 送りは破線 + 「PRE」マーカーで区別して描画。計画は JSON 保存・画像出力に対応。
  • ルーティングの警告: ダッカー ON のチャンネルが USB ダイレクト出力に結線されていると「ダッカーがダイレクト出力に乗りません」と警告 (前述のコメントのケース)。96 kHz 超の INS FX / FX2、176.4 / 192 kHz のステレオチャンネル EQ などサンプルレート依存の使用不可も注記。
  • デバイス制御 (非公式): Device Center (TOOLS for MGX / URX に同梱) 稼働中に、実機の現在設定の読込、設定の書込、設定状態を逐次相互反映するライブ同期に対応 (一部パラメータは本体タッチスクリーン専用で書込不可 — 後述)。
  • コンソールビュー: 同じ設定内容をミキサー面 (ストリップごとのフェーダー・ミュート・EQ・ダイナミクス・センド) として表示。ライブ同期中はライブメーターも動作。
  • 外部 MIDI コントローラー割り当て: フィジカルコントローラーからコンソールを操作。

ファームウェア V1.3 で追加されたパラメータ (STEREO バスへのアサイン ON/OFF) にも追従済みです。

検証状況と免責 (v1.0.1 時点)

  • パラメータ対応は URX44V でのみ実機検証済みです。URX44 は (HDMI 関連を除いて) 同一と仮定、URX22 はそこからの推測で、いずれも実機未検証です。URX22、URX44 をお持ちの方の検証への協力を歓迎いたします!
  • 一部のパラメータは実機の仕様上 URX Router から書き込めません (CH → FX センドの PRE/POST、SD レコーダーの Track Count — いずれも本体の操作タッチスクリーンからのみ変更可能)。ライブ同期中は実機の値を読み取って表示します。
  • 動作確認済みの組み合わせ (ファームウェア / Device Center のバージョン) はリポジトリの known-issues に記載しています。
  • 非公式ツールであり無保証です。書込は実機の現在の設定を上書きします。利用は自己責任で、詳細はリポジトリの免責事項を参照してください。

入手


Yamaha・URX・CC1・Cubase・Nuendo・MixKey は Yamaha 株式会社または Steinberg Media Technologies GmbH の商標または登録商標です。Stream Deck は CORSAIR (Elgato) の商標です。URX Router は非公式ツールであり、各社とは無関係です。

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