ATH-M60xa を購入して音を聞いてみて、すべての周波数帯にわたって低い THD (全高調波歪み率) の性能がもたらす音の印象に驚きがあったのでその感想を書き残しています。

参考にした情報
購入する前に Sonarworks Blog のレビュー記事や実際に使っている Vtuber の方からお聞きしたご意見を参考にさせていただきました。当初は SHURE SRH840A を検討していたのですが、結果的にこちら (ATH-M60xa) を購入することができて大変幸運でした。
第一印象
開封直後に RME Fireface UFX II のヘッドホン出力を使用して音を聞いた感想は購入前に聞いていたご意見通りで、以前から使っていた SHURE SRH1540 で感じていた音の滲みがなくなってより明瞭に聞こえると感じました。確認のために聞いた曲では特にバスドラムの立ち上がりの音が他の音に混じらずはっきり聞こえ、大きな違いを感じました。低域の音が滲まずくっきり聞こえるようになるため、低域の音量が大きいわけではないのですが重心低めの音楽に向いているという評価につながっている可能性があります。
比較した SRH1540 は低域の THD が大きめのため、余計にこのような違いを大きく感じることになったと考えています。THD の測定結果は Sonarworks Blog のレビュー記事を参考にさせていただいています。
- AudioTechnica ATH-M60x Studio Headphone Review
- 製品のページのテクニカルデータやダウンロードできる取扱説明書を確認したところ、ATH-M60x と ATH-M60xa の違いはリミッタースイッチの有無となるようで、その他の仕様はほぼ同じと考えています
- Shure SRH1540 Studio Headphone Review
- Shure SRH840 Studio Headphone Review
- THD は SRH1540 と同様の傾向があり、こちらを選んでいたら ATH-M60xa のように違いは感じられなかったのではないかと想像します
自宅システムへの導入
私はヘッドホンの周波数特性を加味して聞こえる音を判断できる耳を (技術、知識や経験含めて) 持っていないので、普段 SoundID Reference による補正を Universal Audio Apollo x6 (Gen2) のヘッドホン出力で有効にして使用しています。ATH-M60xa と SRH1540 はそれぞれ専用の補正プロファイルが用意されているので、これを適用して聞き比べてみました。周波数特性の補正後も変わらず音が滲まない ATH-M60xa は SRH1540 と比較して同じ音量で全体的に音が聞き分けやすいという印象になりました。
長時間使用する場合には聞き疲れしないか、装着時の快適性など他の要素が重要になってくるため、どちらが優れているなど単純な結論を出すことはできません。SRH1540 は少し大型ですが軽量で装着感が非常によく、長時間使用していても快適に感じます。小型軽量でポータブル機器でも鳴らしやすい ATH-M60xa の仕様は持ち運ぶ際の快適性が素晴らしいですが、オンイヤー型のため窮屈感が少し強いことは否定できません。ですが、その窮屈感も良い設計でとても少なく抑えられていて非常にバランスの良い製品だと感じました。今後集中して分析的に音を聞きたいときに活躍してもらおうと考えています。
ヘッドホンの周波数特性の補正
まだ多くはないようですが、ハードウェアを使用してほぼ遅延なしでモニターヘッドホンの周波数特性の補正が可能な製品が存在しています。
- Sonarworks SoundID Reference + Apollo Monitor Correction Add-on (※ 2025 年 11 月現在、ATH-M60x が SoundID の対応ヘッドホン一覧に記載あり)
- IK Multimedia ARC ON•EAR (※ 2025 年 11 月現在、ATH-M60xa は対応ヘッドホン一覧に記載なし)
周波数特性についてはこのような製品で補正することは可能ですが、THD やインパルス応答の性能は補正しようがありません。今後も私は補正できることを前提に機材を選ぶことを想定しているため、分析的に音を聞きたいときに使用するヘッドホンは周波数特性がフラットであることよりも別の性能を重視して選択することになりそうです。
最後に
ここに挙げさせていただいた素晴らしい製品の設計・製造に関わっていらっしゃる皆様と、相談させていただいた私の用途や好みも考慮してご意見をくださったミスティさんに改めて感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございます。

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